保険でできる白い奥歯「PEEK冠」

こんにちは、大阪府堺市中区の深井駅前の歯医者のMiho歯科医院 院長の前原です。
最近患者様から「保険でできる白い歯があるってネットで出てるんですが・・・」とお問い合わせをいただきます。
PEEK冠と呼ばれるもので、2023年12月の保険改訂で健康保険でできる歯科治療の中に入ってきました。
こちらの治療について解説します。

1.PEEK冠とは
保険適用になったCADCAM冠としてのPEEK冠は、主成分が「ポリエーテルエーテルケトン」という白い被せ物で、無機質フィラー(セラミックの一種)を配合したレジン(合成樹脂)のブロックをコンピューターを用いて削り出したものです。
力が加わった際にたわみやすく、従来のCADCAM冠よりも破折しにくいという特徴があり、これまでのCADCAM冠で適用されなかった第二大臼歯や第三大臼歯にも適用できます。

2.耐久性
一般的には2年程度で変色、摩耗などの劣化が進み、場合によっては寿命を迎えてしまうと考えられています。
毎日食事をして歯磨きをして、歯にはさまざまなダメージが加わります。
噛むことですり減ります。
材料自体も劣化します。
すり減る事で噛み合わせが狂ってしまうリスクが心配です。


3.色あい
PEEK冠は「アイボリー」しか色がありません。
従来のCADCAM冠よりも歯としては不自然な色合いです。
また、従来のCADCAMには「A3」「A2」など色のバリエーションがありましたので、
保険の範囲内でも多少は個人に合わせた色を選択することができました。
PEEK冠は銀歯のように暗い色ではありませんが、
透過性を付与することが難しい材料ですので、
従来のCADCAMよりは歯としては自然な色合いでもありません。

4.安全性
PEEK冠は生体安全性が高い被せ物だといえます。
生体親和性が高く,成分の溶出量が少なく,安定して使える材料です。
PEEKは医科の分野では医療機器やカテーテル,体内インプラントなど生体埋入の実績もある材料ですので、これまでの銀歯よりは安全性が高いです。
銀歯の場合はお口に入れていからイオン化して唾液に溶け出し、体内に取り込まれて全身に移行していきます。
手足や頭皮など末端にも溶け出した金属は到達すると言われます。
PEEKは金属の使用が敬遠される場合や金属アレルギーのある患者にも適用でき,非金属材料の歯冠修復による治療の選択肢が広がりつつあります。

5.噛み合う歯に対する安全性
PEEK は物性値としてのビッカース硬度はハイブリッドレジンより小さく,対合歯に対して咬耗を生じさせにくいとされます。
噛み合う相手の歯に対しては安全な材料です。.
また,過度の咬合力に対して緩衝作用も期待できるという特徴も有しますので,
歯根への負担が生理的範囲で歯の寿命に有利に働くことが期待できます。

6.接着
PEEK冠は接着剤で歯に装着します。
材質的にフィラー含有量が少ないため、従来のハイブリッドレジンのCADCAM冠よりは接着力が劣ると言われます。
脱離しやすいのではないかと思われます。
食事中に外れて、一緒に噛んで割れてしまうなどのトラブルが起きそうに思えます。


7,現状の普及具合
保険適用としてPEEK冠が認められましたが、
2024年4月の時点では材料が潤沢に行き渡っておらず、
制度としては認められたものの実際に治療としては実施している歯科医院は少ないようです。
当院でも、取引している歯科技工所に何度も問い合わせをしておりますが、
まだ材料が入手できないため実際の症例は行っておりません。
 ➡︎2024.08.10追記:歯科技工所にPEEK冠の材料が行き渡るようになり、症例を限定して少しずつ臨床導入しています。実際に実施している歯科医院も増えてきました!

「白い」とはいえ、「アイボリー」色の一択で、色の調整はできません(>人<;)

歯としてはかなり不自然な色合いになります。


まとめ
保険でできる白い奥歯「PEEK冠」が導入され、銀歯のような金属アレルギーのリスクはない被せ物であるが、色が不自然な白さだったり摩耗や劣化があって寿命が短い可能性がある。まだ導入されて間もないため、歯科医院で実際に行っているところは少ないが、今後少しずつ材料が普及すれば広まっていくものと思われます。

以上が現在の時点でのPEEK冠に対する情報でした。

Miho歯科医院

院長 歯科医師 前原美保