セレックによるワンデートリートメント

こんにちは。

Miho歯科医院の院長の前原です。

当院に「セレック」システムを導入して約半年ほど経ちました。

今日はセレック治療について、そのメリットなどとともにまとめていますので、

どうぞ最後までお読みくださいね。

こちらはセレックシステムでセラミックインレーを設計しているところです。

セレックは約40年ほどの歴史があり、

虫歯の治療としては長持ちする予後の良い治療システムです。

口腔内スキャナーと呼ばれるコンパクトなカメラでお口の中をカラーで撮影し、

最先端の3D画像を用いてコンピューターで詰め物の設計をデザインして、

ミリングマシーンと呼ばれる加工機によりその場でセラミックのブロックから詰め物を短時間で削ります。

詰め物は大きさにより5〜10分程度で削り終わります。

ワンデートリートメント

セレックの最大のメリットは、最短で虫歯治療の当日にセラミックの詰め物がお口の中に装着できる、ということです。

それにより、

通院、麻酔をする回数が1回で済みます。

次回装着の場合は仮歯を装着しますが、

仮歯の間に歯が汚染されたり割れたりするリスクがありません。

また、大抵は型取りから1〜2週間の間は仮歯で過ごさねばなりませんが、

当日に詰め物や被せ物が入るということは大幅に治療の期間も短縮でき、

仮歯の不便な生活をしなくて済みます。

仮歯は最終の歯と違って取れたりしみたりする可能性がありますから、どうしても食事の内容に制限ができたりと気を遣って過ごさねばなりませんよね。

人と会うのに仮歯では会いにくいので約束を先延ばしにしたということもあるでしょう。

歯科的に最も重要なことは、

削ってその日につけることで、削った歯が汚染されないので

接着剤がしっかりとその性能を発揮してくれ、強固にしっかりと装着することができるということです。

研究論文によるとワンデートリートメントのセラミックは9割が30年の耐久性があるとのことです。

一般には保険治療での虫歯治療のサイクルは約5年スパンである、と言われています。

初発で虫歯が発生した場合には、小さい虫歯のうちでしたら大抵はコンポジットレジンと呼ばれる樹脂(プラスチック)の詰め物をします。

レジンは平均使用年数が5.2年です。

レジンは特殊な光を当てて口の中で固めますが、その際に重合収縮といって95〜97%くらいに小さく縮んでしまいます。

そのため、レジンの詰め物は詰めた後でヒビ割れたら剥がれたらして、しばらくすると虫歯になります。

体積が関係するので大きな詰め物ほど危険性が高いでしょう。

また再度虫歯になると次はインレーと呼ばれる金属の詰め物になります。

銀歯ですね。

銀歯にするためには便宜的に歯を削る必要があります。

詰め物の厚みを確保したり、外れにくい形に整えたり、型取りしやすい形にするなどで、

だいたい1回で2〜3mmの歯質を失います。

銀歯は平均使用年数が5.4年です。

保険で使用するセメントは接着力が弱くて経年的に劣化して溶け出していったり、

銀歯が噛む力で少しずつ変形して隙間ができたり、

また口の中にはアイスクリームのような冷たいものやスープやお味噌汁、ラーメンなどの熱いものが入り、温度変化が5℃〜50℃と言われますから、それにより変形が起こります。

こうして、噛む力と温度変化により詰め物と自分の歯に隙間ができ、

そこに細菌が繁殖して虫歯になっていきます。

詰め物を作り替えて、もう一度少し大きな銀歯になり、また再度虫歯になって…と5年サイクルで再治療を繰り返していると、そのうち歯の神経に達してしまって「抜髄」という神経を抜く治療が必要になります。

神経を抜くためにはさらにら大きく歯を削ることになります。

神経の管が見えるように整えて、消毒の器具が届くように神経の入り口を広げたりと、さらに歯は小さく弱くなっていきます。

そして神経を抜いたあとはクラウンと呼ばれる被せ物になります。

被せ物にした場合の平均使用年数は7.1年です。

被せた縁に虫歯ができたり、根っこが折れたりして抜歯になってしまいます。

つまり、

初発の虫歯→レジン治療→5.2年後インレー→5.4年後クラウン→7.1年後抜歯

最初の虫歯から約18年後には抜歯になっていきます。

20歳の時に虫歯治療をしたら38歳でその歯は抜歯になる計算ですね。

抜歯をしてブリッジにした場合どうでしょうか?

3ユニットブリッジ(3本の連続したブリッジ)の10年生存率は3割です。

つまり7割ダメになります。

38歳でブリッジにした場合は48歳でダメになって、次は部分入れ歯となります。

このように5年サイクルで再発して歯を削る治療をしていたら、

徐々に自分の歯は失われて入れ歯に近づいてしまっています。

そこで、セレックワンデートリートメントを考えてみましょう。

20歳でできた虫歯をレジン治療をしていて、

25歳でまた虫歯になってインレーにするとします。

この時に銀歯ではなくセラミックの治療をしていれば、セレックで30年もたせることができれば55歳までセレックインレーのまま過ごせますね。

55歳で再治療をした場合には、次は30年また使ったとして85歳でやりかえになります。

セラミックの場合は噛み癖などにより欠けるリスクもありますが、銀歯を5年サイクルでやりかえていくよりも、セレックなら20年、30年サイクルでやり方を考えることができ、

身体にとっては非常に優しい治療と言えると思います。

セレックのメリット

・隙間から新しい虫歯にならない

・歯の亀裂防止になる

・保険治療より健康な歯を削らずに済む場合もある

・神経への刺激が少ない

・その日のうちに接着すると歯の感染を防止できるので、虫歯が非常に再発しにくい

・その日のうちに接着すると接着剤のつきが良いため長持ちする

・通院回数や麻酔の回数が減る

セレック治療後の写真

ここには、元はプラスチックの詰め物が入っていました。

一度削って外して(古いプラスチックの詰め物はその下に虫歯があることが多いのです)、綺麗にした上で、深い部分は再度プラスチックで整えます。

その後に歯の形を整えてセラミックの詰め物を作るのに適した形にします。

神経がある歯ですと、麻酔をして痛くないようにして削ります。

その後に3Dのスキャナーでお口の中のカラー写真を撮影します。

撮影したデータから詰め物をデザインします。

デザインができると、そのデータを元にセラミックのブロックを機械で削ります。

セラミックには色合いが色々とありますので、

それぞれの方の歯の色に合わせたブロックを選んで使用します。

ブロックの硬さも種類がありますので、歯ぎしりがある人や噛み合わせがきついと判断されるケースでは、より硬いブロックを使用します。

通常はご自身の天然歯の硬さと近い硬さの物を使用しますので、人工的に自分の歯のエナメル質をセラミックで作るようなイメージですね。

機械でセラミックの詰め物や被せ物を削る所要時間は、5〜10分程度です。

削り終わったものを磨いて仕上げをしたらお口に装着していきます。

専用のセメントを用います。

接着処理もしっかり行って装着しますので、

基本的にはそうそう外れることはありません。

噛み合わせは微調整して合わせます。

セレックのセミナーに行って来ました

先日、4月23日(日)はセレック治療のクオリティを高めるため、

大阪市内にて行われたセミナーに参加して来ました。

講師の先生は東京銀座のカザマデンタルクリニックの風間龍之輔先生です。

様々な症例を学んだり、

実際に模型を使ったデモンストレーションを見ることができました。

歯科のセミナーの参加者は男性の先生が多いですが、今回のセレックのセミナーは2/3くらいが女性のドクターでしたね。

最後に、こちらはセレックのブロックの見本です。

様々なブロックがありますね。

メーカーさんのショールームが会場でしたので、

展示されているものも色々と見ることができ、

セレック以外にも治療用のチェアやCT、

またセレックミリングマシーンの別の機種なども見ることができて良かったです。

Miho歯科医院

院長

前原美保

インプラント周囲炎への対応

こんばんは。

深井駅前 Miho歯科医院 院長の前原です。

昨日、インプラント周囲炎の治療のセミナーを受けてきました。

講師の先生は、イエテボリ大学歯周病科出身の大月基弘先生。

現在、サンスターの歯磨き粉「gum」のCMにもご出演されています。

東京や熊本など遠方からも参加者の先生がお越しになられていました。

インプラント周囲炎は、わかりやすくいうとインプラントの周囲が歯周病になった状態で、

インプラントを支える骨が吸収して溶けてしまい、歯茎から血や膿が出たり、インプラントがグラグラして噛むと痛みが出たりします。

炎症がインプラント周囲の歯茎だけにとどまっているインプラント周囲粘膜炎とは異なり、

外科処置を行って歯茎を切開してインプラント周囲を綺麗にしてあげないと治癒しません。

一旦インプラント周囲炎になってしまうと4〜6割しか治らないと言われ、

しかも治療法は確立されていません。

インプラント周囲炎は進行するとインプラントが抜け落ちてしまいます。

今回のセミナーではインプラント周囲炎の歯を模型で再現してあり、マイクロスコープを用いて外科治療を行う実習もありました。

インプラントに異常を感じる場合には手遅れになる前に歯科医師の診察を受けましょう。

Miho歯科医院 歯科医師 前原美保

義歯治療について

堺市中区 深井駅前の女医によるクリニックMiho歯科医院、院長 歯科医師 前原美保です。

今日は当院の<義歯治療>について解説します。

当院では義歯(入れ歯)を希望の方に、

・保険義歯

・精密義歯:精密入れ歯治療

・審美義歯

を行っています。

その中でも精密義歯の流れを紹介します。

<<精密入れ歯治療の流れ>>

入れ歯といってもいくつかのパターンに別れます

A)残っている歯の抜歯を伴う上下総入れ歯

B)総入れ歯難症例

C)部分入れ歯

A)残っている歯の抜歯を伴う上下総入れ歯

お口の中に残っている歯が虫歯で悪くなっていたり、歯周病でグラグラしている場合は、歯を抜かなければいけないことがあります。

すぐに入れ歯を装着することができませんので、いくつかの段階を経て、最終入れ歯を作ります。

合計2つ〜3つの入れ歯を作ります。

<ステップ1:治療用義歯の作成と装着>

歯がある状態で型取りを行い、即時義歯と言われる入れ歯を作っていきます。歯がある状態で作った入れ歯は、歯を抜いた後の歯茎の形と厳密にはあいませんが、最終入れ歯をイメージした形や噛み合わせを設定して制作します。

即時義歯が完成してから、歯を抜くと同時に即時義歯を装着します。歯がない期間ができないようにしていきます。通院する間隔にもよりますが、通常1〜2ヶ月程度かかります。

<ステップ2:治療用技師で噛み合わせのリハビリ、歯茎の治癒待ち>

歯茎が型取りできる程度に落ち着いてきたら治療用義歯を作成していきます。治療用義歯とは最終入れ歯の原型になる入れ歯で、実際にお使いいただきながら噛むためのリハビリを行っていきます。

歯を失うことによって噛み合わせが狂っていることがよくあります。作った入れ歯が合わないことの原因の多くは噛み合わせが狂っている状態で入れ歯を作ることによるもので、噛み合わせが狂っているとよく噛める入れ歯にならず、何度調整しても痛みが出る入れ歯となってしまうのです。この治療用義歯でしっかり噛めるようにしておくことが最終の入れ歯を成功させる秘訣となります。

また、最終の入れ歯を作る前に、どのような歯の大きさにするか、歯並びはどうか、色や形はどうかなど見た目の美しさに関しても十分に検討していただくことができます

歯を抜いてから歯茎の傷が治るまで最低でも3ヶ月程度かかりますので、その間はこの入れ歯を使って傷が治るのを待ちます。

このリハビリ期間は通常は3-6ヶ月程度です

<ステップ3:最終入れ歯の制作と装着>

即時義歯のリハビリが終わり、歯茎が落ち着いてきたら最終入れ歯を製作します。製作には通常1〜2ヶ月程度かかります。

<ステップ4:最終入れ歯の調整>

新しい入れ歯は精密に作ったとしても最初から完全にフィットさせることは難しいです。新しい靴が靴擦れするように、柔らかい歯茎の上に硬い入れ歯が乗ると痛みや違和感が出ます。微調整を行って合わせていきます。噛み合わせや内面の調整を行います。歯を抜いて入れ歯を作った場合は数ヶ月から1年程度で歯茎が穏やかに下がってくることがありますので、その場合は内面の状態を修正する処置を行います。

<ステップ5:定期チェック>

入れ歯は作って終わりではなく、良い状態を保つために定期的にチェックをして行きます。お口の変化とともに微調整を行います。

以上が義歯の治療の流れです。

お口の状況によって進行具合は変わりますので、

義歯をご希望の方はまずはお気軽にご相談ください。

精密義歯の場合はその方のお口に合わせたオーダーメイドな対応ができますので、

自費治療で高額ではありますが、クオリティの高いものが作成ができます。

Miho歯科医院 歯科医師 院長 前原美保

歯周病の意識調査

11月8日は「いい歯の日」でした。「歯周病の意識調査」が行われましたので、

その調査結果を解説します。

今回の調査の対象者は、

20代から60代までの男女500名(本人、または同居の家族が医療・製薬業種、または専門家ではない全国 20~60 代の男女 500名).

調査期間は2021年9月24日(金)〜 9月27日(月)の期間で、インターネットにて実施されています。

本調査結果では、コロナ禍以降、歯科医院への受診をためらう人は半数以上にのぼり、“受診控え”が見受けられる中、口の状態が悪化したと 5 人に 1 人が回答しています。

歯の神経を保存するMTAセメントとは?

MTAセメントは「Mineral Trioxide Aggregate」の略で、歯科用のセメントです。ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、酸化ビスマス、石膏などが主な成分です。

MTAセメントは強アルカリ性(PH12)で、強い殺菌作用をもちます。
お口の中のように唾液があって水分の多い状態でも硬くなる性質を持っています。

歯の中の神経にまで達した深い虫歯の場合、神経を取る治療を行わないといけなくなります。しかし歯の神経を取ると、

①歯がもろくなる、

②虫歯の再発に気づきにくいため結果的に抜歯が必要になってしまう、

③大きく削るため歯の強度が弱くなる、

などの理由により、歯の寿命が短くなる可能性が高くなります。

MTAセメントを使用した治療は、このような根管治療を回避し、できるだけご自身の歯を長持ちさせるとして、最近注目されている治療方法です。

具体的には露出した神経や血管をMTAセメントで覆うことによって歯の神経を残します。

【MTAセメントのメリット】

●水、組織液などで濡れている状態でも硬化する
口の中は水分、組織液、血液などで湿った状態です。ほかのセメントは、通常湿った状態だと固くならなかったり、接着力が低下したりしますが、MTAセメントは濡れている状態でも硬化します。

●強い殺菌作用
MTAセメントは強アルカリ性(PH12)で、強い殺菌作用をもっています。 通常ほとんどの細菌は、PH9.5で破壊されます。

●生体親和性が高い
MTAセメントは体の中に入れても悪い影響の少ない、体にやさしい素材です。

●セメントが硬化するときに膨張する
MTAセメントは硬化するときに膨張します。細かな隙間がうまることにより緊密に患部を封鎖することが可能になります。

●良質なデンチンブリッジ(保護層)が形成される
MTAセメントを使用すると良質なデンチンブリッジ(保護層)が形成されます。それによって患部に細菌が入り込むのを食い止める効果も期待できます。

【MTAセメントのデメリット】

・変色する場合があります。(前歯の治療では要注意)
・非常に高価です。1グラムあたりが金よりも高価になります。
・ほとんどのケースで保険適用外となります。(クリニックにより治療費は異なります)
・根管内に入れた場合、固いので除去が困難になります。(今後の再治療が困難)
・扱い方が少しむずかしく、操作性が悪くなります。(治療テクニックが難しい)


歯を抜かず自分の歯で過ごすために、MTAセメントは有効な症例があります。