歯根端切除術とは

根管治療が上手く行かなかったり、歯の根の先の病変が大きくなったりした場合は、「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」という治療が行われることがあります。なんだかわよくわからない治療法ですが、重症化した根の病気では、とても重要な処置となります。今回はそんな歯根端切除術についてわかりやすく解説します。

▼歯の根の先端を切り取る処置

歯根端切除術とは、歯の根っこの先を外科的処置によって切除する処置法です。ですから、処置の際には歯茎をメスで切り開く必要があります。そうすることで「根尖病変(こんせんびょうへん)」が露わとなり、切除が容易になります。

▼根尖病変ってなに?

根尖病変とは、歯の根っこの先に生じた膿のかたまりです。そこには細菌や白血球の死骸だけではなく、生きた歯周病菌も存在しており、依然として病変の拡大を引き起こしています。そうした根尖病変は、根管治療をきちんと行うことで徐々に消失していきます。けれども、ケースによっては根管治療が上手く行かず、いつまで根の先に残ってしまうことあるのです。そういったケースでは、歯根端切除術が有効となります。

▼術後の注意点について

歯根端切除術は、外科処置の一種であることから、術後にいくつかの注意点があります。まず、難症例の抜歯と同じように、術後、歯の周囲が腫れたり、痛みが生じたりすることがあります。処置の後には鎮痛薬や抗炎症薬が処方されますので、適宜、服用するようにしましょう。また、外科処置という性質上、術中や術後に感染のリスクが高まる点についても注意しなければなりません。もちろん、予防的に抗菌薬の投与が行われることがほとんどですが、術後のケアの仕方によっては、細菌感染が引き起こされてしまいます。

▼治癒にかかる期間

歯根端切除術では、歯の根っこの先だけではなく、顎の骨の一部も除去することから、治癒までにそれなりの期間が必要となります。歯や顎の骨の状態にもよりますが、治癒するまでには半年から9ヶ月かかるものと考えましょう。

▼まとめ

このように、根尖病変が悪化した症例では、歯根端切除術という少し特殊な外科処置が行われることがあります。患者さんの心身への負担は大きくなりますが、歯を残せるという点においては、非常にメリットが大きい治療法といえます。ですから、主治医としっかり話し合った上で、慎重に治療選択を行うようにしましょう。

なぜ、あなたが歯を治すなら、銀歯より金合金の歯がいいのか?

むし歯になって、歯質を大きく削るようなことがあると、何らかの修復物を装着しなければなりませんよね。最も一般的なものが「銀歯」です。これまで奥歯のむし歯にかかったある人は、銀色の詰め物や被せ物がお口の中に入っているかもしれませんね。そんな銀歯は、いくつかの点において金合金より劣るといわれています。今回はそんな銀歯よりも金合金の歯の方が優れている理由をわかりやすく解説します。

▼銀歯は安くて手軽に作れる修復物

保険診療での奥歯のむし歯治療は、基本的に銀歯が用いられます。材料が安価で取り扱いやすいからです。そのため、とくに深くは考えずに銀歯を選択してしまう人も少なくありません。けれども、銀歯を構成する金属には、比較的アレルギーを引き起こしやすいものが含まれているというデメリットがあるのです。

▼金属アレルギーのリスクの違い

銀歯は歯科用の銀合金で構成された人工歯です。一方、金合金で構成された人工歯は、貴金属の占める割合が比較的多く、金属アレルギーのリスクも小さい傾向にあります。銀歯より金合金の歯が優れているのはそのためです。やはり、金属アレルギーのリスクというのは、全身の健康状態にまで影響を及ぼすものなので、治療の質そのものにも大きくかかわるといえます。

▼メタルタトゥーが起こりにくい?

銀歯による治療のデメリットとしては、もうひとつ「メタルタトゥー」というものが挙げられます。歯ぐきに金属色が沈着してできる刺青のような黒ずみで、口元の審美性を大きく低下させます。このメタルタトゥーは、主に溶け出した銀イオンによるところが大きいので、金合金を使用した歯では、そのリスクも小さくなります。これもまた銀歯より金合金の歯の方が優れているゆえんといえます。

▼治療の精度の違い

金というのは、展延性に富んだ金属です。これはつまり柔軟性に富んだ金属であり、歯と修復物をすき間なく接着させることが可能になります。詰め物や被せ物が歯質と精密に結合すれば、むし歯菌の入り込むすき間もなくなり、病気の再発を防ぐことにもつながります。この点は明らかに銀歯よりも金合金の方が優れているといえます。

▼まとめ

このように、銀歯と金合金の歯を比較すると、3つのポイントにおいて金合金が優れているといえます。ですから、治療後のことも考えたら、銀歯ではなく金合金の歯を選択した方が良いといえます。ただし、金合金の歯は保険が適用されないという点もしっかり押さえておきましょう。

MIペーストについて

薬局やドラッグストアには、むし歯予防のケア用品がたくさん並んでいますよね。各社とも日々研究を重ね、さまざまな製品を開発しています。そんな中、注目を集めているものに「MIペースト」と呼ばれるものがあります。もうすでにお使いの方もいらっしゃれば、今回初めて耳にしたという方もいらっしゃることでしょう。今回はそんな「MIペースト」についてわかりやすく解説します。

▼歯を強くする薬用ペースト

MIペーストとは、簡単にいうと歯を強くする効果が期待できる薬用ペーストです。そう聞くと、まず思い浮かぶのはフッ素塗布やフッ素入りの歯磨き粉ですが、MIペーストに含まれる主な成分はフッ素ではありません。CPP-ACPという特殊な成分が配合されることによって、2つのむし歯予防効果が得られます。

▼MIペーストによるむし歯予防効果

MIペーストを使用すると、歯の再石灰化の促進と緩衝作用が期待できます。歯の再石灰化の促進はフッ素でもおなじみですが、MIペーストによってもその効果がえられます。もうひとつの緩衝作用というのは、食事をした後などにお口の中が酸性へと傾いた際、中性へと引き戻してくれるものです。歯は酸性の刺激に弱い性質を持っているので、中性が維持されることで、むし歯予防効果も高まります。その効果がMIペーストに期待できるのです。そこで気になるのがMIペーストの主成分となっている「CPP-ACP」という物質ですよね。

▼「CPP-ACP」とは?

「CPP-ACP」とは、リカルデントとも呼ばれる成分で、かんたんにいうと牛乳由来のタンパク質ですリン酸カルシウムで構成されており、歯を修復する際の材料となります。リン酸カルシウムというのは、もともと唾液にも含まれているのですが、MIペーストにはその20倍程度の濃度が含有されていることから、歯の再石灰化の促進作用も極めて高くなっています。

▼MIペーストの「MI」とは?

最後に、MIペーストの「MI」についてですが、これは「ミニマルインターベンション(Minimal Intervention)」の略称です。日本語では「最小限の侵襲」を意味し、できるだけ歯を削らずに歯質を保存しよう、という意図が込められています。

▼まとめ

このように、MIペーストを活用することで、むし歯を効率よく予防することが可能となります。とくに歯科医院で取り扱っているMIペーストの効果は、極めて高くなっていますので、機会があれば積極的に活用することをおすすめします。

口腔機能低下症とは何か?

皆さんは、「口腔機能低下症」という病気をご存知でしょうか?最近、注目されるようになってきた病気で、高齢の方ほどそのリスクが高まります。今回はそんな口腔機能低下症についてわかりやすく解説します。

▼いろいろなお口の機能が低下する病気

お口が担う機能というのは、食べ物を噛むだけではありません。その他にもさまざまな機能があり、それらを実行する力が弱くなる病気を口腔機能低下症と呼んでいます。ここではそれぞれの症状についてかんたんにご紹介します。

▼口腔乾燥

ドライマウスのようなお口の中が乾燥する症状は、口腔機能低下症が疑われます。主に唾液腺の機能が低下することで、お口の中が渇きやすくなります。ですから、唾液腺をマッサージしたり、食事の際によく噛んだりすることで、唾液腺の機能を向上させることが大切です。

▼噛む力の低下

年をとると、徐々に歯の本数が減っていきますよね。さらに、そしゃくを担う筋肉の力も弱くなることから、噛む力であるそしゃく力が低下します。これもまた口腔機能低下症の症状のひとつといえます。そうした噛む力を取り戻すには、適切な歯科治療を受けたり、歯ごたえのある食べ物を積極的に食べたりすることが有効といえます。

▼発音機能の低下

言葉を正しく発音できなくなることも、口腔機能低下症のひとつの症状です。口唇や舌、口腔周囲の筋肉が衰えていることが主な原因となります。ですから、毎日、早口言葉を練習したり、家族や友人とおしゃべりする機会を増やしたりすることが大切です。吹き戻し笛を使用することで、唇や頬の筋肉を鍛えるという方法もあります。とにかく、毎日行えることから始めることが大切です。

▼飲み込む力の低下

飲み物や食べ物を飲み込む「嚥下(えんげ)」機能の低下も、口腔機能低下症の主な症状のひとつとして挙げられます。嚥下機能の低下は、「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」という重篤な病気のリスクを大幅に引き上げますので、可能な限り早期に改善することが求められます。嚥下機能の訓練は、歯医者さんで学ぶのが一番です。一度覚えてしまえば、毎日かんたんに行うことができます。

▼まとめ

このように、昨今注目されつつある口腔機能低下症は、実にさまざまな症状が現れます。それらは、重篤な全身疾患にもつながりかねないものなので、放置するのは良くありません。お口の機能の低下を自覚されたら、まずはお気軽に当院までご相談ください。口腔機能低下症の治療法やリハビリ法について、わかりやすくお伝えします。

口呼吸のデメリット

普段、日常生活を送っていて、呼吸の仕方を考えることはほとんどないかと思います。呼吸というのは、無意識に行うものなので、改めてどのように息を吸って、吐いているのか考える必要もありませんよね。けれども、呼吸の方法によってはさまざま悪影響が及ぶことがあります。とくに口呼吸には要注意です。そんな口呼吸のデメリットについてわかりやすく解説します。

▼口腔乾燥を引き起こす

口呼吸のデメリットとしては、まず口腔乾燥が挙げられます。口を開いた状態で呼吸していると、空気が口腔を経由して気道へと送り込まれることから、自ずとお口の中が乾燥してしまいますよね。その結果、ドライマウスを発症する人が少なくありません。

▼風邪を引きやすくなる

風邪などの感染症を引きやすい人は、もしかしたら口呼吸になっているかもしれません。お口には、鼻腔に備わっている病原体を排除するためのシステムがないため、口呼吸をしていると細菌やウイルスに感染しやすくなるのです。ちなみに、鼻腔には吸い込んだ空気に適度な湿気を与える天然の加湿器のような機能も備わっており、鼻呼吸をするメリットは非常に大きいといえます。

▼むし歯や歯周病にかかりやすくなる

むし歯や歯周病も細菌感染症の一種ですよね。お口の中が渇くことで細菌繁殖が促され、むし歯や歯周病のリスクも上昇します。ですから、口呼吸には口腔疾患のリスクを引き上げるというデメリットも存在しているのです。

▼歯並びが悪くなる

口呼吸による意外なデメリットとしては、歯並びの悪化が挙げられます。常に口で呼吸をしていると、口輪筋などが弛緩してしまい、前歯にかかる圧力が消失します。その結果、前歯が前方へと傾いて、出っ歯の症状を引き起こすことがあるのです。とくに成長期に口呼吸が習慣化していると、歯並びはもちろんのこと、顎の骨の発育にまで異常が生じることがあります。これはお子さまにとって非常に大きなデメリットとなるため、早期に改善しておくことが望ましいといえます。歯医者さんでは、そうした口呼吸による悪影響を防止するために、さまざまな治療を実施することができますので、まずはお気軽にご相談ください。

▼まとめ

このように、鼻呼吸ではなく口呼吸をしていると、皆さんが想像している以上にたくさんのデメリットが発生します。そうしたデメリットの中には、取り返しのつかないものもあることから、たかが口呼吸とは軽視せず、適切な対応をとることが望まれます。