静脈内鎮静法について

歯医者さんでは、むし歯治療でよく局所麻酔を使いますよね。おそらく皆さんも一度は局所麻酔を受けたことがあるのではないでしょうか。それだけに、歯医者さんは局所麻酔だけを行うと思われがちですが、他にもケースに応じてさまざまな麻酔処置を施します。例えば、「静脈内鎮静法(じょうみゃくないちんせいほう)」というのは、歯医者さんでも使う場面が増えてきています。今回はそんな静脈内鎮静法について、わかりやすく解説します。

▼不安感や恐怖心を取り除く麻酔

一般的な歯科治療で用いる局所麻酔は、施術に伴う痛みを取り除くのが主な目的です。実際、局所麻酔を施した後は、歯を削っても強い痛みを感じることがありませんよね。一方、静脈内鎮静法は、痛みを取り除くのではなく、施術に伴う不安感や恐怖心を緩和するのが主な目的です。そのため、むし歯治療や歯周病治療で使用する機会はほとんどないといえます。

▼インプラントオペで使用する機会が多い

静脈内鎮静法が活用される治療といえば、インプラントです。インプラント治療では必ず人工歯根を埋め込むための外科手術を行いますよね。むし歯治療とは異なり、「手術」に対しては強い不安や恐怖を感じる人も少なくありません。手術中に強い不安感におそわれ、血圧が急上昇したり、何らかの発作を起こしたりしたらとても危険なので、静脈内鎮静法を施すことがあります。

▼意識が半分なくなる処置

静脈内鎮静法と混同されがちなのが「全身麻酔」です。外科手術では全身麻酔が行われることもありますが、静脈内鎮静法とはまったく別物であるとお考え下さい。全身麻酔をかけると、意識を完全に失うだけではなく、循環器や呼吸器の機能も停止します。そのため、手術中はたくさんの医療スタッフが患者さんの全身状態を管理することとなります。

一方、静脈内鎮静法では意識が完全になくなることはありません。意識を半分失ったような状態なので、歯科医師が呼び掛けるとかろうじて反応することができます。また、循環器や呼吸器の機能が完全に停止することもありません。

▼手術の記憶もなくなる

静脈内鎮静法には、健忘作用というものが期待できます。これは薬剤を使っている間の記憶がなくなる作用です。インプラントオペは、医科の手術と比べるとかなり規模の小さい処置となりますが、やはり、その記憶が鮮明に残っていると、歯科治療に対する恐怖心も強くなってしまいます。ですから、健忘作用が期待できることは、患者さんの精神面においても非常に大きなメリットといえるのです。

▼まとめ

このように、静脈内鎮静法はある場面においてとても有益な効果を発揮する麻酔処置です。重度の歯科治療恐怖症の方にも適応されることがありますので、歯科治療がどうしても怖いという方は、一度お気軽にご相談ください。

熱中症予防にスポーツドリンクを飲んでも良い?

梅雨の時期や夏場などは、こまめに水分補給しなければ、脱水症状を引き起こしてしまいます。とくに、熱中症に関しては十分な注意が必要で、スポーツドリンクを頻繁に摂取している人も少なくないでしょう。

ただ、スポーツドリンクには歯に悪影響を与えるリスクがあることから、熱中症予防として飲むことに、不安に感じている人も少なくありません。今回はそんなスポーツドリンクの適切な飲み方についてわかりやすく解説します。

▼むし歯の原因になりやすい

スポーツドリンクは、水分補給を目的に飲む上でとても適した飲み物といえます。汗によって流れ出た電解質まで補給できることから、身体を正常な状態に保ちやすくなっています。ただ、市販されているスポーツドリンクの大半は、とても甘いですよね。甘みがある分、飲みやすいのは良いことなのですが、糖分が豊富に含まれており、むし歯のリスクも上昇することを忘れてはいけません。

▼酸蝕症(さんしょくしょう)を引き起こす?

酸蝕症とは、むし歯以外の原因で、歯が溶けてしまう病気です。例えば、お酒やジュースなどをチビチビと飲む癖があると、お口の中が酸性に傾きやすくなり、歯質が脱灰していきます。それはスポーツドリンクにおいても同じことがいえます。

しかも、熱中症予防にスポーツドリンクを飲むとなると、かなり頻繁に摂取することになりますよね。お口の中はその都度、酸性に傾き、歯が溶けやすい環境となることから、酸蝕症を誘発します。そういう意味において、熱中症予防でスポーツドリンクを飲むことは推奨されない場合があります。

▼水で水分補給するのがベスト

理想的な熱中症予防の方法としては、こまめに水を飲むことです。当然のことながら、水には糖分が含まれていませんよね。しかも中性付近の飲み物なので、お口の中が酸性になることもありません。ただし、流れ出た電解質は補給できないという欠点があります。ですから、激しいスポーツなどで大量に汗をかき、電解質まで奪われたような状況であれば、スポーツドリンクによる水分補給が有効といえます。スポーツドリンクを飲んだあとは、水でうがいをするなど、お口の中をきれいに洗い流せば、むし歯や酸蝕症のリスクも低下します。

▼まとめ

このように、歯の健康を考えた場合、スポーツドリンクを頻繁に摂取することはあまり良いことではありません。一方で、熱中症予防など全身の健康維持を考えた場合は、スポーツドリンクが適していることもありますので、ケースバイケースで考えていくことが大切です。

エアーフローについて

歯の汚れを落とす方法といえば、「PMTC」が一般的ですよね。歯のクリーニングとも呼ばれるこの方法は、歯科医師や歯科衛生士が専用の器具を使って、1歯1歯ていねいに磨いていきます。そんな中、最近ではエアーフローという施術法も行われるようになってきました。今回はそんなエアーフローについてわかりやすく解説します。

▼エアーフローとは?

エアーフローとは、歯のクリーニングの一種で「ジェットクリーニング」と呼ばれることもあります。細かなパウダーを歯に吹き付けて、ジェット水流で汚れを落とすクリーニング法です。従来の歯のクリーニングでは落とせない、しつこい着色汚れなども除去が可能となっています。

▼使用されるパウダーについて

エアーフローで使用されるパウダーは、炭酸水素ナトリウムやグリシンです。炭酸水素ナトリウムはいわゆる「重曹(じゅうそう)」であり、皆さんもお家のお掃除などで使用した経験があるかと思います。グリシンはアミノ酸の一種で、生体にも安全な材料といえます。

▼エアーフローが適した症例

エアーフローは、着色の量が多かったり、細かい部分まで汚れが入り込んでしまっていたりする症例に適しています。細かいパウダーが歯の隅々にまで行き届くので、比較的強い着色でもきれいに落とすことができますよ。

▼エアーフローのデメリットについて

エアーフローは、非常にメリットの多い歯のクリーニング法ですが、デメリットもいくつかあります。まず、エアーフローに使用するパウダーには、独特な味がするので、それを苦手とする人も少なくありません。また、パウダーを吹き付ける時などにチクチクとした不快感が生じやすいという点もデメリットとして挙げられます。

▼歯にダメージはないの?

エアーフローでは、とても強い勢いでパウダーを吹き付けるので、歯にダメージが及ばないのか心配される方もいらっしゃいます。その点はご安心ください。エアーフローによって歯が傷ついたり、ダメージを負ったりすることは基本的にありません。安全かつ効率よく着色汚れを落とせるのがエアーフローの特性です。

▼まとめ

このように、エアーフローは歯の着色汚れを落とす方法として、さまざまなメリットが得られます。従来のPMTCと使い分けながら、お口のケアに役立てることをおすすめします。そんなエアーフローについてさらに詳しく知りたい方は、お気軽に当院までご相談ください。エアーフローについてさらに詳しくご説明します。

あなたのお口にカビが生える!?口腔カンジダ症とは

私たちのお口の中には、たくさんの病原菌が生息しています。最も有名なのは「ミュータンス菌」ですね。むし歯の原因となる細菌で、ほとんどの人のお口の中に住み着いています。それと同じくらい広く感染が広がっている病原菌に「カンジダ菌」というものがあります。口腔カンジダ症と呼ばれる病気を引き起こす病原体で、さまざまなお口の症状を生じさせることがあります。今回はそんな口腔カンジダ症についてわかりやすく解説します。

▼カンジダ菌への感染で生じる病気

口腔カンジダ症とは、真菌の一種であるカンジダ菌に感染することで発症する病気です。真菌というのは、細菌とは少し異なる生物なのですが、カビの一種として考えていただいて問題ありません。つまり、口腔カンジダ症にかかるとお口の中にカビが生えるのです。

▼カンジダ症の特徴

カンジダ症にかかると、お口の粘膜や舌の上に白い病変が現れます。この病変は、綿棒などでこすると簡単に拭い去ることができます。そういった点も正にカビと同じですね。ちなみに、カンジダ症の症状が悪化すると、粘膜に炎症や痛みをもたらすこともあるので十分注意しましょう。

▼不衛生な口腔環境が原因

カンジダ症は、お口の中を不潔にしていると発症しやすくなります。それは一般的なカビも同じですね。とくに舌の表面に「舌苔(ぜったい)」が堆積している場合は要注意です。舌苔には、むし歯菌や歯周病菌だけではなく、カンジダ菌も繁殖しているからです。舌苔が溜まっている人は、日ごろから舌ブラシによるブラッシングを行うようにしましょう。

▼不潔な入れ歯も原因になる

入れ歯を装着している場合もカンジダ症にかかりやすくなっています。入れ歯は、カンジダ菌の温床ともなりやすいものなので、日ごろからしっかりケアすることが大切です。義歯ブラシでていねいにお掃除することはもちろん、入れ歯洗浄剤による化学的な清掃も毎日行うようにしましょう。

▼カンジダ症の治療法

カンジダ症の治療は、歯科医院で行っています。治療法はケースによっても異なりますが、比較的症状が強い場合は、抗真菌薬などのお薬を使用することもあります。いずれにせよカンジダ症の症状が認められたら、すぐに当院までご連絡ください。

▼まとめ

このように、カンジダ症は誰にでも起こり得るお口の病気です。むし歯や歯周病と同様、お口の衛生状態を維持することで予防していきましょう。

上あごの骨が薄い人のインプラントについて

インプラントは、とても優れた補綴治療ですが、誰にでも適応できるというわけではありません。とくに、顎の骨の状態に大きく左右されやすい治療なので、必ず事前にレントゲン撮影やCT撮影を実施します。その際、上あごの骨が薄いと診断されたら、すぐにインプラントを実施するのは困難となります。今回はそんな「上あごの骨が薄い」場合の対処法をわかりやすく解説します。

▼上あごの骨が薄いとどうなる?

インプラント治療では、顎の骨に人工歯根を埋め込むという処置を必ず伴いますよね。人工歯根であるチタン製のネジは、長さが1センチ程度なので、それがきれいに収まるくらいの顎の骨の厚みが必要となります。ですから、上あごの骨が薄い場合は、インプラントを埋入した時に、その先端が骨から突き出すリスクが生じます。

上あごの骨のすぐ上には、「上顎洞(じょうがくどう)」と呼ばれる空洞が存在しており、不適切なインプラント治療では、「上顎洞への穿孔(せんこう)」という事故が起こってしまうのです。

▼上あごの骨の厚くする治療

上あごの骨が薄い場合は、その骨を厚くするための治療を受けることができます。専門的には「上顎洞挙上術(じょうがくどうきょじょうじゅつ)」と呼ばれるもので、一種の再生療法といっても間違いではありません。骨の厚みが足りていない部分に人工骨などを移植して、骨の再生をはかります。アプローチする部位の違いから、「サイナスリフト」と「ソケットリフト」という名前の治療法があります。

▼上顎洞挙上術の特徴

上顎洞挙上術は、骨が再生するまでに数ヶ月の期間を要します。ですから、インプラント治療の期間もそれだけ長くなるというデメリットがあります。とはいえ、本来であればインプラントを断念せざるを得ないケースでも、埋入オペが可能となることから、施術によって得られるメリットも極めて大きいです。上顎洞挙上術が適応できるかどうかは、精密検査を実施しなければわかりません。

▼まとめ

このように、上あごの骨が薄い人でも、上顎洞挙上術を行うことで安全、確実なインプラント治療を実施できます。上あごのインプラントというのは、人工歯根の上顎洞への穿孔という偶発症を招きやすいことから、上あごの骨はしっかり検査し、十分な厚みを確保する必要があります。その上で、必要なる再生療法などを検討していきます。